人事が明かす「大人のスマートな退職術」〜次の職場で成功する人は、辞め方が圧倒的に美しい

タカボン
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長年、採用の最前線で多くのビジネスパーソンと面接を重ねてくると、ある一つの確信に行き着きます。それは、「退職のプロセスには、その人のビジネスパーソンとしての総合力がすべて丸裸になって現れる」ということです。
もちろん、採用面接の時点で「前の会社をどう辞めてきたか」のすべてを完全に把握できるわけではありません。しかし、面接での受け答えや、入社日の調整、前職への配慮といった端々から、その人が前職を「立つ鳥跡を濁さず」で美しく去ってきたかどうかは、不思議と透けて見えるものです。
退職時は、自分自身の権利を守りつつ、残される同僚や取引先への影響を最小限に抑えるという、高度な「利害調整」が求められます。ここで周囲への「大人的気の回し方」ができる人、組織内でうまく立ち振る舞いができる人は、新しい環境に行っても間違いなく周囲の信頼を勝ち取り、活躍することができます。
退職は単なる「お別れの手続き」ではなく、あなたのビジネススキルを総動員する「最後のビッグプロジェクト」なのです。
今回は、これから退職を考えている方へ向けて、損をせず、かつ周囲に惜しまれながら次のステージへ進むための「4つの観点」を、人事の視点から解説します。

損をせず美しく辞めるための「4つの実践ポイント」

① 賞与(ボーナス)は「もらう前」か「もらった後」か

結論から言えば、「賞与が口座に振り込まれるのを確認してから、退職の意思を伝える」のが大原則です。
コンプラ意識の高い大企業ならいざ知らず、中小企業などでは、支給前に退職を伝えてしまうと、今後の期待値がゼロになるため査定を大幅に下げられたり、最悪の場合は支給対象外にされるといったトラブルが少なくありません。
さらに、ここで人事の目線としてぜひ知っておいていただきたい「極悪パターンのお落とし穴」があります。それは、「支給日に籍はあっても、有給休暇の消化に入っている場合は賞与を支給しない(または大幅に減額する)」というケースです。
就業規則に「賞与支給日に在籍していること」としか書かれていなくても、実態として「支給日まで実際に勤務(出社)していること」を暗黙の条件にしている会社は残念ながら存在します。
賞与を確実にもらうための最大の防衛策は、「賞与が支給されるまでは有給消化に入らず、通常通り勤務する」ことです。支給日までは全力で業務に励み、しっかり受け取った後にスマートに切り出しましょう。

② 有給休暇は「全消化」か「買い取り」か

(※前述の通り、まずは「賞与支給日までは有給消化に入らない」前提で全体のスケジュールを組むことが重要です)
その上で、「残った有給はすべて消化したいけれど、言い出しにくい」という声をよく聞きます。
法律上、有給休暇の「買い取り」は原則として認められていません。労働者の休む権利を守るためです。ただし、「退職時に消化しきれず、そのまま消滅してしまう有休」に限っては、会社が特例的に買い取ることが認められています。
最近はトラブル防止のために「有休をすべて消化してから辞めてもらう」という方針の企業も増えていますが、業務の都合上どうしても消化が難しい場合は、「引き継ぎのために出社する分、残った有給を買い取ってもらえないか」と会社側に相談・交渉してみる価値は十分にあります。

③ 退職金の明暗を分ける「勤続期間の算定方法」

退職金の金額に大きく影響するのが「勤続年数」の数え方です。ここを数日勘違いするだけで、支給額が数十万円単位で変わることがあります。
会社によっては「在籍期間の端数が7ヶ月以上の場合は、1年に切り上げる(繰り上げる)」といった、労働者に有利なルール(端数処理)を設けているケースがあります。実は多くの企業でこうした「○ヶ月の境目」の規定が存在します。
退職日を「月末にするか、翌月の1日にするか」だけで勤続年数のカウントが変わる場合もあるため、事前に退職金規程の算定方法を徹底的にチェックし、最も有利になる日を逆算してスケジュールを組みましょう。

④ 役職別・業務引き継ぎに必要な期間

円満退職の要となるのが引き継ぎです。これは役職やポジションによって、求められる深さと期間が異なります。

例えば、以下の表は私がこれまで勤務してきた会社で平均的(そして慣例的)に行われてきた引き継ぎの内容です。

役職・ポジション必要期間の目安引き継ぎのポイント備考
一般職、スタッフ職2週間〜1ヶ月「実務・手順」の可視化後任が明日からすぐに作業を迷わず進められるよう、マニュアルや業務フローを形に残す。
監督職、リーダー職1ヶ月〜1.5ヶ月「プロジェクト・進行管理」の移譲自分が担当している案件の進捗状況の共有や、関係部署への根回し、チーム内での役割の引き継ぎ。
管理職1.5ヶ月〜2ヶ月以上「戦略・重要顧客・人事」の引き継ぎ最重要顧客への挨拶回り(後任の紹介)、部門の年間目標、予算、部下の育成状況や評価の引き継ぎなど、属人性の高い「見えない情報」の言語化。

ここで人事としてお伝えしたいのは、「引き継ぎの完了」は現職との交渉事であると同時に、「次の職場への誠意」を試される場でもあるということです。

現職場のペースに巻き込まれ、「引き継ぎが終わらなくて……」と入社日をズルズルと延ばしてしまう姿勢は、転職先の人事に「期限を決めてタスクを終わらせる遂行力」や「周囲と折衝する力」を疑われかねません。退職が決まってから慌てて資料を作るようでは遅すぎます。日頃から業務の整理とマニュアル化を進め、「いつでも後任にバトンを渡せる状態」を作っておくこと。それこそが、いざという時に自分自身を助ける、大人のスマートな転職準備なのです。

まとめ~大人の退職チェックリスト

最後に、これから退職を迎える方が今すぐ確認すべきポイントを簡単にまとめます。

  • □ 就業規則と退職金規程の確認(※意思を伝える前に!)
    • 賞与の支給要件や、退職金の端数処理(切り上げの境目)を把握する。
  • 戦略的なスケジューリング
    • 「賞与支給後」に退職を切り出し、自分の役職に見合った引き継ぎ期間を確保できる退職日を設定する。
  • □ 「大人的気の回し方」を忘れない
    • 権利の主張(有給完全消化など)だけでなく、残されるメンバーへの配慮をセットで交渉・行動する。

退職は、今の会社での「最後の仕事」であると同時に、次の職場でスタートダッシュを決めるための「最初の準備」でもあります。

お世話になった職場への感謝を示しつつ、自分の未来もしっかり守る。そんな「うまくやれてる」大人の立ち振る舞いで、美しい旅立ちを迎えてください。

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