転職の年収交渉は「源泉徴収票」が正解!20年の人事が教える額面と手取りの罠
長く企業で働いている方でも、「手取りと総支給額(額面)の違い」や「年末調整の仕組み」について、実はあまり詳しくないというケースは意外と多く見受けられます。
今の会社で長く働き続けるのも素晴らしい選択ですが、もし今後、キャリアアップや転職を少しでも視野に入れているのであれば、事前に知っておくだけで確実に有利になる「労務の基本知識」がいくつかあります。
私はこれまで、約20年にわたり企業の給与・労務管理を担当してまいりました。今回はその経験を踏まえて、転職活動で損をしないための実践的な知識をご紹介したいと思います。
この記事を読むことで、以下のメリットが得られます。
- 転職にあたって、知っておくと有利な労務上のポイントがわかる
- より有利な条件で転職交渉を進めることができる
それでは、本題に入りましょう。
給与・賞与の総支給額(額面)と手取りの違いをわかっておく
転職にあたって必ず問題になるのが、次の職場でもらいたい給与額、つまり「希望年収」です。
転職を考えているのであれば、誰でもザックリとした希望年収の水準はあると思います。
能力、成果、経験、資格、将来性など、その水準を決定する要素は色々ありますが、「手取り」を根拠としておっしゃる方も少なくないのです。
ここで給与や賞与の「総支給額(額面)」と「手取り」の違いを押さえておきましょう。
- 総支給額(額面):所得税、住民税、社会保険料(厚生年金、健康保険、雇用保険)を引く前の金額
- 手取り:上記を引いた後の金額(手取りを計算する際は、自身が掛けている給与引き保険料や社員旅行の負担金などがさらに引かれているケースもあるので注意が必要です)
「紙の給与明細は捨ててしまって手元にない」とか、「Webの給与明細はIDもパスワードもわからない(見たこともない)」というような方も多くおられるので、根拠のある方法で年収を計算するとなれば、「銀行振込額(≒手取り)」となってしまうのも理解できなくはありません。
しかし、「希望年収」として提示しなければならないのは「総支給額(額面)」としての金額です。「手取り」準拠で希望年収を提示してしまうと、そこからさらに税金・社会保険料等が差し引かれるため、収入UPを目標に転職を目指しているにも関わらず手取りが下がってしまいます。
こうした違いをしっかり把握して、転職先企業へ希望年収を伝える際は、必ず「総支給額(額面)」を伝えるようにしましょう。
年収の総額は「源泉徴収票」で確認・提示する
自身の年収を把握する方法として、源泉徴収票で確認するというのもおすすめです。
源泉徴収票(および市区町村に提出される同等の書類)は、税務署への申告や住民税の金額決定にも使われる、『オフィシャルにあなたの年収を証明できる公的なデータ』です。
前年分の源泉徴収票を転職先に提出すれば、公式にあなたの収入を証明していることになり、嘘偽りのない証明を渡せるため給与交渉もスムーズに運びます。
※ちなみに、晴れて転職先に ”入社” したときに転職先に渡さないといけない源泉徴収票は、「前年」分ではなく、「今年」分です。
源泉徴収票を年収の裏付けとして提示するメリット
自身の給与額を証明するために、給与明細を1年分集めて提出する方法もありますが、この方法だと逐一支給項目をチェックされることで、少し期待から外れた効果を生んでしまう可能性があります。
給与明細には、「基本給」や「資格手当」、「営業手当」などの一般的な項目のほかに、以下のような手当が含まれていることがあります。
- 「皆勤手当」のように最近あまり見られない手当
- 「通勤手当」、「住宅手当」、「扶養手当」のような、転職先で支給されていなかったり、支給基準が違ったりする、属人的な手当
これらの手当に転職先でチェックが入ると、「ウチでは扶養手当の支給がありません」、「ウチでは住宅手当の支給基準が変わるので、1万円ほど下がりますね」という具合に、不利に働く場合があります。

そういう意味でも、源泉徴収票を転職先に提示するメリットは大きいです。源泉徴収票には年収としての総額は表示されていますが、その内訳についてはまったく表記されていません。
実際、このことが私の転職で非常に好都合に働いたことがあります。
源泉徴収票の総額には非課税の「通勤手当」は含まれませんが、本来なら含まれているはずの「住宅手当(課税対象)」なども含まれていないと、転職先の担当者が勝手に解釈してくれたのです。実際には総額の中に手当が含まれていたにも関わらず、そこにさらに手当を上乗せして支給してくれるという、とてもハッピーな間違いをしてくれました。
結果、実際の年収としてもアップし、住宅手当や通勤手当までさらに上乗せしてもらい、大幅な年収UPが実現しました(もちろんそのことは黙ってました)。
まとめ
普通は人事担当者は給与のことにも詳しいので、さすがに先ほどの私のエピソードのようなことはなかなか起きにくいです。
しかし、敢えて明細を見せないことで(あくまで要求されなかったから見せなかったのですが)、お得になるケースもあるということで例示してみました。
「総支給額(額面)」と「手取り」の違いを認識して対応することで、転職後の給与が下がってしまうという事故は減らせます。まずは、ご自身のお手元にある最新の源泉徴収票を引っ張り出して、『支払金額』の欄を確認することから始めてみてください。